木炭(もくたん)と木酢(もくさく)

 

従来からの製炭法には無蓋(がい)、坑内、堆積、築窯(ちくよう)方式があるが、このうち最も行渡っているのが築窯方式であ

る。製炭法は黒炭生産、白炭生産に大別できる。

 

黒炭生産

まず炭材を炭窯に詰め込み、煙道を密閉してから窯口で焚(た)き火し、1〜3日くらいかけて窯内を加熱する。これは樹皮を締

(しめ)らせ、炭材の割裂(かつれつ)を一様にするためである。

窯内の乾燥がすんでから煙道口を広げると、炭窯の温度は徐々にのぼり、80度ぐらいになると煙が排出する。これを辛煙(か

らけむり)という。

炭窯の上部温度が300〜350度になるとセルロースの分解が活発になり、炭化が進行し始めるから、焚き火を中止して炭材

投入口を密閉する。炭化は上部から下部に向かって進み、上部が500〜600度になると、上げ木は完全に炭化する。この

間、通風口を調節して3日くらいかけて炭化を徐々に行う。

次が精錬工程である。

この時期には可燃ガスの排出量が多くなるので、通風口を広げ、煙道口を狭め、窯口で十分燃焼させる操作をする。こうして、

15〜20時間、500〜600度の温度を持続させて、分解揮発性成分を除去する。低温による長時間の精錬によって、火付き、

火持ちのよい黒炭が生産される。

白炭の生産も黒炭とほぼ同じであるが、精錬により樹皮を燃焼させるので炭化温度は黒炭の場合よりもずっと高温になる。

炭材にはナラ、クヌギ、カシなどがよい。

 

活性炭

木炭が空気の脱臭および溶液の脱色に有効であることは古くから知られていた。このような効果は、木炭がその小孔の表面に

いろいろの物質をひきつけて保持する吸着現象によって起こるが、時にはそれらの物質が化学的変化を受けることもある。

木炭は空気中の酸素を吸着するので、同時に吸着された有機物は木炭表面に保持されたまま酸化されることになる。

空気の供給を制限して800〜1000度に加熱すると、木炭は著しく活性化される。

このような方法で得られた生成物は活性炭と呼ばれる。

亜炭、瀝青炭または無煙炭を注意深く炭化し、水蒸気賦活(ふかつ)すると良質の活性炭の安価な供給源として役立つことが

第一次大戦中に発見された。

活性炭はガスマスク、脱色、浄水という三つの主要目的のために製造される。

 

木酢(もくさく)

木材を乾溜して得られる液体は2層になるが、そのうちの上層部を木酢という。

主としてメチルアルコールと酢酸とからなるが、その他蟻酸などの低級脂肪酸、酢酸メチル、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒ

ド、フルフラール、アセトン、メチルエチルケトン、ジェチルケトン、アンモニア、メチルアミン、ピリジン、トルエン、キシレンなどの

数多くの有機化合物が含まれている。

この木酢はかっては毛皮のなめしに用いられ、メチルアルコールや酢酸の製造にも利用されたが、現在ではこれらの用途には

ほとんど用いられない。

 

 

 

 

 

ブリタニカ百科事典より