ライスブレッド

 

ライスブレッドは米粉を小麦粉に配合して製造するものと、米粉を主原料とし、これにバイタルグルテンを添加したパン用調製粉を用いて行うものがある。
本来、米粉は性質的にグルテンとの親和性が低いため、いずれの方法の場合においても、この点の改善や加工上の工夫が必要である。

 

パン用米粉の製造法


米粉を使用したパンを製造するためには、グルテンとの親和性の高い米粉の調整が不可欠である。
グルテンと米粉の親和性は米粉の粒度が細かいこと、安息角が小さいこと、水とのぬれ特性が大きいことの三つの粉体特性により決定され、米粉は、これらの特性がすべて劣っているため、小麦粉用途にはこれまで主原料として使用することができなかった。
これらの特性を満たした米粉を調製するには、米の浸漬工程にペクチナーゼやヘミセルラーゼなどのマセレーティング酵素剤を利用し、米粒組織の分解を行って、米粒内部を極力粉質的状態に改質する。
酵素処理を行った米は、脱水工程を経て米粒に付着する水が除かれ製粉される。 
パンに適した製粉方法は、気流粉砕法か、高速度製粉法が適している。 
高速度製粉法の場合には、製粉機内の網の目を0.2㎜とし、さらにシフターで粗い粉を除いて細かい粉のみを調製する。 
こうして得た米粉は粒度も30μm程度と細かく粉形状も複粒型のデンプンの割合が高くなるため丸みをおび安息角も小さくなる。 
また、酵素処理によりぬれ特性も向上するため、生地調製時の加水量も少なくてすみグルテンとの親和性も高まり、発酵による生地の膨張にグルテンが切れることがない。 
そのため、ガス抜けによる体積減少はなくなる。
パン用米粉は、酵素処理により得た米粉84.5%に、活性グルテン15%、ローカストビーンガム、キサンタンガムなどの多糖類0.5%を添加混合して調製する。

注記 2001・8・25(読売新聞)
    米粉の技術開発は新潟県農業総合研究所で行われた。白米を洗った後、乳酸菌の溶液に浸し、水切りをしてから粉砕し、乾燥し、これに小麦粉に含まれているグルテンを全体の15%ほど添加する。乳酸菌処理によって、従来よりも細かく、丸くて均一な粒子に製粉でき、小麦粉と同様のパンを作ることができるようになった。

 

製パン方法


米粉を用いたパンの製造にあたっては、小麦粉で普通に作る方法をそのまま踏襲してよいが、米粉の性質がパン製造工程上で現れてくるため、その点に気をつける必要がある。 
まず生地ごねの段階で小麦粉の場合には、加水にそれほどの注意はいらないが、米粉の場合には徐々に加えていく必要がある。 
最初に一気に加水すると米粉が団子状態になり、グルテンの形成を阻害してしまう。 
ミキサーの回転も低速から中速で生地を仕上げていく、また、発酵工程では、発酵初期の生地の膨れが少なく、最大に膨れてからの体積の減少が早くなる傾向があるため、酵母を比較的多量に添加し高温で発酵を行い短時間で発酵を止めて、ホイロ工程で体積を増加させていくなどの管理上の注意が必要となる。 

製造法の一例を示すと
パン用米粉100のうち70量と酵母4,ショウトニング1をミキサーで混練する。 
原料粉の1/2量の水を徐々に添加する。 
温度30℃を維持する。 
この生地を30℃中で3時間発酵する。 
発酵後、米粉残部、水、砂糖8,食塩1・8,脱脂粉乳3部を加えて混練する。 
最後に油脂9部を添加し混練する。 
この生地を30℃中で50分間ほどねかせる。 
これを分割し、15分間ほどさらにねかせた後、ホイロを38℃で50分間程度行い、200℃で45~55分間焼成してパンを製造する。 
できたパンはしっとりと柔らかく、トーストすれば表面はパリッと(内部は柔らかく)、米の風味を感じさせる独特のパンとなる。

「米の科学」朝倉書店       


2017年1月27日日本農業新聞

グルテンなし米粉パン開発
小麦アレルギーでもOK
低いでんぷん損傷度が鍵

農研機構、広島大

農研機構食品研究部門と広島大学が、グルテンや増粘剤を使わない米粉パンの製造技術を開発した。
26日、農水省で発表した。でんぷんの損傷度が低い米粉を使うことで、小麦粉のパンと同じように膨らませることができる。
既存のオーブンやホームベーカリーでも可能だ。小麦アレルギーの人などに朗報で、米粉の使い勝手が広がり、消費拡大に期待がかかる。主食用米の消費が減少する中、米粉は小麦粉の代替として利用拡大が期待されてはいるものの、米粉用米の利用量は年間2万トン代前半で伸び悩んでいる。
米粉パンの多くは、膨らませるために小麦グルテンを添加しており、小麦アレルギーの人は食べられなかった。グルテンを使わない場合も、増粘剤などを加える必要があり、手軽に作れないという課題があった。
農研機構などは、でんぷんの損傷度が5%以下の米粉を使うことで、グルテン不使用の米粉パンの製造を実現した。
でんぷんの傷は、製粉時の摩耗熱、衝撃などによって生じ、損傷度が低い米粉は品種にかかわらず、湿式気流粉砕の製粉機で作られるものが多い。
損傷度が低いと米粉は水を吸いにくく、パンのふくらみに必要な気泡を形成しやすい。そのため、小麦粉でパンを作るときと同じ材料だけで、一般的なオーブンやホームベーカリーを使い作ることができる。
農研機構食品研究部門は「小麦粉を使ったパン同等に膨らみ、特別な材料を使っていないため、従来の米粉パンより優れた食味に仕上がる」と説明する。
発酵中に形成した気泡を維持させる技術は現在、特許を出願中。
今後は共同研究者に情報提供し、1,2年以内に同技術を使ったパンを製品化する。
製品販売後に、製パン技術を一般に普及していく予定だ。
農水省は米粉の消費拡大へ、「パン用」「菓子・料理用」など用途別の基準作りに着手しており、でんぷん損傷度も項目に入れる方向。また、グルテンを含まない米粉をはっきり明示するルールも策定する。


農水省

米粉製品「ノングルテン」表示向けルール作り
アレルギーに対応
可視化で消費拡大

人によってアレルギーの原因となるたんぱく質「グルテン」が含まれていない米粉製品を「ノングルテン」と表示するため、農水省が新たなルール作りに乗り出している。
アレルギーに対応した食品の需要が増えていることを捉え、小麦粉の代替での販路開拓を後押しする。
米粉業界の独自基準として普及し、2017年度から国内外で表示を始める。

グルテンは小麦粉などに含まれる物質。
麺類やパンなどの加工品を作る上で、弾性や柔軟性を決定し、膨張を助ける働きがある。
米粉パン作りでも添加する場合がある。
ただ、アレルギーの原因の一つとされ、欧米ではグルテン含有量が20㏙を下回る食品を「グルテンフリー」と表示する制度がある。
国内では小麦を特定原材料として、これを使用した加工食品は原材料名の表示を義務付けている。
一方で、グルテンの有無を表示するルールは定められていない。
このため同省は16年度から、グルテンの含有量が極めて少ない米粉を、「ノングルテン」と表示する基準の策定に着手。
17年度から全ての米粉の製造業者を対象に、表示を始める。
現行案では、グルテン含有量が検出可能な最低値とされる1㏙を下回ると確認できた製品に限り、「ノングルテン」と表示する方針。
欧米の「グルテンフリー」より厳しい基準とし、小麦粉が加えられ米粉製品との違いも訴える狙いがある。
表示は日本語と外国語の表記をそれぞれ認め、輸出にも対応する。
表示の認証は、民間の認証機関に判定してもらう予定だ。
同省は「グルテンを含まない食品へのニーズに米粉が応えることができれば、近年頭打ちの消費を増やすことができる。米粉用米を増産するきっかけにもなる」(穀物課)と期待する。



2017年8月20日毎日新聞

米粉で水田を守ろう

普及へ官民タッグ
輸出促進に力/商品開発に補助金

農林水産省が官民でタッグを組み、米粉の普及に取り組んでいる。
コメの新たな需要を拡大することで消費減少に歯止めをかけたい考えだ。
消費者が選びやすいように菓子用やパン用など、用途に応じた表示基準を新設し、今後は輸出拡大も狙う。

米粉は、コメを髪の毛の太さ程度の直径50~100マイクロメートルに粉砕したもの。
パンや空揚げ、お好み焼きなど小麦粉を使った料理のほとんどに代用できる。
米粉を使ったパンは小麦粉のものに比べ、もっちりとした食感になる。
唐揚げはカッリと揚がり、お好み焼きはダマになりにくい。
小麦粉に含まれるグルテンは心身に不調が生じる「セリアック病」の原因になるとされるが,米粉にはグルテンが含まれていないのも特徴だ。

主食用米の年間需要量は平均毎年約8万トンずつ減少している。
2009年7月~10年6月の1年間814万トンだったが、昨年7月~今年6月は750万トンに減った。
一方、米粉としての消費は09年ごろから徐々に増加。
近年は年間2万トン台で推移しており、農水省は「米粉の需要を増やすことで、水田を維持したい」(穀物課)考えだ。

米粉メーカー大手の熊本製粉(熊本市)は、米粉の売上高が12年度から16年度までに3倍に増えた。
アレルギー体質の人でも食べられることから「ドラッグストアなどにも販路が拡大している」(同社幹部)という。

農水省は3月、米粉の普及策として菓子やパン、麺といった用途別の表示基準を新設した。
小麦粉は用途ごとに薄力粉や中力粉、強力粉に分けられているが、米粉は製造業者によって製粉方法や品質にばらつきがあり、消費者にとってわかりにくかった。
基準は、デンプンの一種であるアミロースの含有率の違いにより、

米粉を
△ケーキや揚げ物、お好み焼きなど菓子・料理用の「一番」
△パン用の「2番」
△麺用「3番」ーの3種類に分類。

今年度中にも米粉のパッケージに表示されるようになる。

米粉メーカーや全国農業協同組合中央会(JA全中)などは5月、農水省の呼びかけで米粉の業界団体、日本米粉協会を設立した
国内の普及活動に加え、輸出促進にも力を入れる。
10月から来年1月までドイツやフランス、イタリアなどで米粉を使った料理の試食会や商談会を行う。
セリアック病患者が500万人以上いる欧州は「米粉のメリットをアピールできる」(日本米粉協会)と、関係者の期待は高い。

普及には課題もある。
米粉は1キロ当たりの価格が100~290円と、小麦粉の約100円より高い。
製造量が少なく製粉にコストがかかっているためだ。
コストを下げるには需要拡大が欠かせず、農水省は「ヒット商品が出れば需要は拡大する」(穀物課)として、商品開発費用の半額を補助して後押ししている。