米穀粉
米穀分は米を原料として糯米や粳米を製粉したもので、主に和菓子の原料として使われている。
菓子の原料として加工するには、熱や火を通して、アルファー化して加工するものと、生のままベーター化で加工するものとがある。
用途別に下記のように分類されている。
生粉製品(ベーター型) 粳米 【上新粉】 だんご、柏餅、草餅、ういろう 【かるかんこ】 かるかん饅頭等 糯米 【餅 粉】 大福餅、餅だんご、しる粉、求肥、最中等 【白玉粉】 白玉だんご、しる粉、求肥、大福餅等 糊化製品(アルファー型) 粳米 【乳児粉】 乳児食、重湯等 【味甚粉】 和菓子等 糯米 【寒梅粉】 押菓子、豆菓子、製菓用、糊用、重湯用等 【味甚粉】 和菓子等 【落雁粉】 落雁 【道明寺】 おはぎ餅、桜餅等 【上南粉】 玉あられ、桜もち、つばき餅、おこし等 生粉製品(ベーター型)は 水洗い→ 胴搗 または 粉砕→ ふるい分け→ 乾燥の順で行われる。 糊化製品(アルファー型)の場合は、さらに熱や火を通す作業が加わる。
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上新粉
粳米を原料とし、水洗いした米を、水切り後胴搗製粉したものを米の粉、ロール製粉法で仕上げたものを上新粉と分ける場合もある。 色は白く、歯ごたえがあり、主に柏餅やだんご、草餅、ういろうなどに使用される。 上用粉よりは粗く、米の風味があるものがよいとされている。
《使用上の注意》 粳米の生の粉であり、少々は乾燥していますが、余りの長期保存は細菌やカビが繁殖したり、固まったり、虫が入ったりするため、できるだけ早く使用する。 また各製粉メーカーによって品質がかなり違うので、加水や蒸す時間に注意が必要。 米本来の力を出すためには胴搗きした方がよい。
《上新粉を使った和菓子》 花見だんご、生八つ橋、青柳ういろう、生八つ橋 聖 等。
原料は粳米を用い胴搗工程で作られ、上新粉よりは粒が細かい。 じょうよ饅頭を始め高級和菓子に使われる。
《使用上の注意》 上用粉は、すべての粉の中でも非常に粒子の細かい粉である。 作業中に空中にまい、落下して他の菓子につくとカビの発生の原因にもなりかねないので静かに作業するか、または、部屋を区ぎって作業するとよい。 特に頭の毛か眉毛が真っ白になる事がある。 十分注意して使用されたい。 上用饅頭の基本配合は、つくね芋の約倍が砂糖でその総目方の二分の一が上用粉です。
《上用粉を使った和菓子》 子持饅頭、家喜芋、園の絹、しら藤、山づと、逐莱、三河の沢、花衣、白菊、唐衣、菊の庭、花の旅、青梅 等。
粳米を水に浸し、その後水を切り、それを挽いて粉末にしたもの。かるかん菓子を作るのに必要な材料の一つです。
《使用上の注意》 乾燥かるかんと生のままのかるかん粉がある。それぞれ加水分量が違ってくるので注意が必要。
《かるかん粉を使った和菓子》 かるかん饅頭、閑雪、栗庵 等。
精白していない米を焙煎したもの。打ち菓子、まぶし物などに用いる。
《使用上の注意》 飯米を白米にしないまま焙煎してあるので、栄養分は非常に高い。味よりも香りを大切にするので、できるだけ早く使用することが望ましい。また、余りたくさん使用すると、苦くなるおそれがあるので注意が必要です。
《玄米粉を使ったお菓子》 すすき、段葛、じゃかご、ナマズ、円通路 等。
昔は寒中に作られたため寒晒粉とも呼ばれている。 糯米を精白し一夜(12〜14時間ぐらい)水浸しする。水切り後原料に対して1〜2倍の水を加えながら石臼で磨砕(水挽)する。ふるいわけられた乳液を圧搾(プレス)して切断、60から70度で熱風乾燥してつくる。 石臼は熱を持たず、粒子が細くなるために用いるが、現在はセラミック製の臼が使用されてきている。 主に求肥、団子、外郎、うぐいす餅に利用される。
《白玉粉を使った和菓子》 利休餅、白玉みつ豆、千歳田楽、ハスカップ田楽 等。
求肥粉とも呼ばれている。糯米を水洗い、浸し漬けた後挽いて乾燥させたもので、白玉粉よりも粗い粉である。 用途はほぼ白玉粉と同じで特に求肥を練るのに使われる。
《使用上の注意》 全国的な呼び名(求肥粉)と、関西の呼び名(餅粉)とあるので注意する。 餅米の生の粉であるため、必ず熱を入れて使用する。 また求肥にする場合、何回かに砂糖を分けて加糖していくのがコツである。
《餅粉を使った和菓子》 花筏、赤坂もち、わさび餅、海の道、鴨川の若鮎、かま餅、田子の月最中、紅梅もち、すごもり、菊節句 浮草、ばらの花、舌鼓 等。
焼きみじん粉とも呼ばれる。 糯米を水洗い、水浸し後、蒸して餅にする。これを色がつかないように焼き上げ、粉末にしたもので、主に 打ち菓子、豆菓子に使用される。 寒梅の名は、ちょうど寒梅が咲くころに新米を粉にするところからいわれる。
《寒梅粉を使った和菓子》 菱菓子、楽石、万葉の花、山川、お干菓子 等。
極みじん粉とも呼ばれている。 また金沢でつくられたことによって加賀みじんともいう。 もち精白米を水洗い、水漬け、水切り後、せいろで蒸し上げよく乾燥したもの(道明寺)を粉砕して、200度前後の平らな焙煎機で少しずつ煎りあげたもの。 打ち物菓子によく使用される。 こがしたものを茶みじん粉(または、こがしみじん)ともいう。
《使用上の注意》 全国的な呼び名と関西の呼び名があるので注意する。 上みじん、細真引とも呼ばれている。 蒸した糯米を煎って白焼きにしたものであるので寒梅粉などに混合して打ち物にするとよい。 また、茶みじんともいう焦がしみじんは、より濃く焙煎してあるので着色しにくいので注意する。
《上南粉を使った和菓子》 打物、おぐら餅、池汀美人、黄檗 等。
イラ粉、真引粉、とも呼ばれ、上南粉(極みじん粉)と同じ製造方法であるが、煎る時は、特に焙煎機でなく砂釜で行われ、目の大きさにより用途が変わる。 主に打ち菓子やまぶし物、高級おこしなどに使われる。
《使用上の注意》 新引粉は目の粗さにより幾つものもの大きさに分けられていて、使い方もそれぞれ違ってくる。 新引粉は色づけが非常にむずかしく、アルコールに着色して新引きにかけるとよい。 しばらくするとアルコールだけ蒸発してきれいに色が染まる。
《新引粉を使った和菓子》 飄々、桜、こぼれ萩、菜種餅、箔の音 等。
大阪の藤井寺市にある尼寺で最初につくられたことにより、この名前が付けられている。 糯米を水洗いし、水漬け後、蒸して乾燥させ「ほしいい(乾飯、糒)にし、丸粒、二つ割り、三ツ割等の適当な粒に 粗挽きしたもので、大きさにより丸粒道明寺、中荒道明寺、細道明寺、頭道明寺などに分けられる。 保存は水分を嫌うので、虫に注意し、涼しいところで管理する。
道明寺 糒(ほしいい) 糒は乾飯の略で、道明寺にて今から千年以上前に、菅原道真公の叔母覚寿尼によってご飯を乾燥させたものからつくり、有名になったので道明寺糒といわれている。 純粋の糯米を二日間水につけ、蒸した後、十日程乾燥させ、さらに二十日白天火で干してから石臼にかけて仕上げる。 明治以降になってようやく一般庶民にも販売されるようになる。
《道明寺粉を使った和菓子》 氷梅、真砂糖、おにぎり、瓢太郎、おはぎ 等。
糯米を原料として、水漬け後、搗いて型入れして冷蔵庫で固め、砂といっしょに焙煎してつくる。 主に菓子の飾り、しるこの種に使われる。 保存は虫に注意し、冷暗場所に保管する。
《玉あられを使った和菓子》 水鏡、九重、水のあや、朝がゆ 等。
しる粉に用いるお菓子種で、東京では”都鳥”とも呼ばれている。 工程は糯米を30分ほど水漬け、蒸してのし餅にする。 餅にするとき着色しプレスする。 翌日一本あるいは一つずつ型に入れて焼き上げる。 湯を注いでも形が長い間崩れないものがよいとされている。 現在製造しているところは数軒しかない。 この工程は複雑ではないが、原料米の選択、気温、湿度に注意し、全行程に気配りしながら作り上げる。 保存は、湿気をさけポリ缶などに入れるとよい。
《ちどり種を使った和菓子》 不老泉、水郷の味 等。
きな粉(黄な粉)の名は、粉になった色の黄色からで、豆の粉とも呼ばれている。古くから大豆の粉としてはあったようですが、きな粉として、一般化されるのは江戸後期頃とされる。 州浜粉は大豆をこげないように煎って、外皮を除き粉砕し粉末にしたものである。 粉砕と色の程度により、きな粉、豆落雁粉、州浜粉などに分けられ、こげをつけたものは焦がしきな粉といわれる。 青大豆を用いた淡緑色の青州浜粉もある。 粉末のため消化が良く香味があり、栄養に富み、餅菓子、団子などのまぶし用や州浜の材料など主に菓子に用いられている。
《使用上の注意》 [きな粉] 作業中に使用するきな粉(取り粉)と完成品にふりかけるきな粉とは完全に別のものにすべきである。 取り粉として使用したものは水分を多く含んでいるので、オープンなどでサァーと乾燥すると使用できる。 いずれにせよ香りが命であるため、できるだけ早く使用するとよい。
[洲浜粉] きな粉ほど完全に焙煎していないので、日持ちが非常に悪い。 また油分の少ない、香りのよいものがよい。 着色する場合、密や砂糖に着色してから洲浜粉を混合した方がよい。 [豆落雁粉] 大豆を焙煎しててん割にしてあるので、香りのよい間に加工するよう注意が必要である。 余り長くおくと油分がでてきて味が悪くなる。
《保存の方法》 吸湿することがあると味が落ちるので、密閉できる容器を使用して保管する。また、害虫の侵入にも注意する。
《きな粉を使った和菓子》 わらびもち、一條餅、わらびもち、よもぎもち、きざはし、こぼんちゃん、豆らくがん、ひがしやま、洲浜、御城之口餅 方丈、豆銀糖、紫香楽、すはまだんご、さくらんぼ、よもぎ餅、そら豆、
収穫されたそばは脱穀し、製粉機で粗挽きして外皮を除き、製粉してそば粉をつくる。 石臼にかけて、ゆっくりと粉砕するのがよいのだが、最近は小麦用の小型ローラーなどほとんどが機械製粉である。 製粉されたものは、ふるいにかけて、一番粉、二番粉、三番粉までとる。種子の中心部をひいたものが一番粉で白く粘りがない。 二番粉、三番粉は色が黒いが、粘りがあって風味もよい。
《使用上の注意》 生粉のため、香りが抜けやすい。そばには完全に皮をとり実だけの粉と、少々皮を入れ、黒く仕上げたものとがある。 用途により使い分けが必要である。粉のうちは非常に虫が入り易いので注意する。
《保存の方法》 小麦粉と同じように、高温多湿をさけ、風通しのよい暗所で保存する。 カビや、虫をふさぐため、密封容器に入れてもよい。
《そばを使った和菓子》 越の栗、夜桜、蕎麦板、蕎麦ぼうろ、そば餅 等。
アメリカ産の「ウェスタン、ホワイト」小麦が世界で最も優れた菓子用小麦として、日本へ輸入されている。 《使用上の注意》 菓子用の小麦は薄力粉が使われる。 色が白く、乾燥したものを使うこと。黄ばんだもの、異臭のするものはよくない。 篩(ふるい)を通し、よく解(ほぐ)して使用すること。 水などと捏ねる時、均一になるように注意する。 《保存の方法》 小麦粉はできるだけ低温、低湿度で保存する。 粉の温度が高くなると変質が早くなる。また、小麦粉は臭いを吸収し易いため発臭性の強いもののそばは避ける。 このほか、小麦粉にはねずみや害虫がつきやすいため、注意が必要である。
《小麦粉を使った和菓子》 餅月、五建ういろ、こなし 等。
麩の素粉ともよばれ、小麦粉の中に含まれるタンパク質のことで、水を加えて練りもち状の固まりとして取り出される。 乾燥させ、粉末にしたものが活性グルテンと呼ばれる。 粘性と弾力性があり、麩の原料として用いられ、菓子、パン、麺に利用される。 生グルテンは冷凍保存し、活性グルテンは高温、湿度を避ける、防虫、防ネズミに気をつける。
《使用上の注意》 小麦粉のグルテン(麩)のみ取り出したもので、水には溶けにくく、非常に作業がしにくいので注意する。 また、香りをつける場合、必ず粉のうちに混合しておかないと混ざりにくい。 団子やういろうの中に少々混合すると力があるので、おいしくなる場合がある。
《グルテンを使った和菓子》 笹巻き、麩菓子 等。
麦こがしともいわれ、大麦を焙煎して粉にしたものである。 生産地により違いがあり、関東方面では皮麦、関西方面では裸麦を用いている。 大麦は小麦同様にイネ科の一、二年草で麦に大別される。 穂の型により、六条種と二条種に分けられ、六条種はさらに籾殻が離れやすいのを裸麦、離れにくいのを 皮麦として分けられる。
《使用上の注意》 よく焙煎してあるが、比較的虫のつきやすい粉のひとつである。 使用する前に篩いにかけてから使用する。 また、香りが無くなると使用できなくなるので注意する。
《はったい粉の使った和菓子》 春がすみ、麦しずく、むぎらくがん、麦手餅 等。
小豆は豆科の一年草、原産地は東アジアといわれ、今日でも日本をはじめ朝鮮半島や中国で栽培されています。 最も古い記述として残るのは中国の「斎民要術」(五世紀)で、栽培法や収穫法が書かれています。 日本では「日本書記」や「古事記」(いずれも八世紀)に、稲、麦、大豆、粟などが一緒に穀物起源神話として登場しま す。 羊羹、餡、甘納豆など和菓子の原料としても古くから利用され、現在では餡の主原料となり欠くべからざる重要な材料 の一つとなっている。 小豆は、種類が非常に多いことも特徴ですが、その種類についてあまり知られておりません。まず、種皮の色は赤、 白、黒、緑、淡黄色それに斑(ぶち)のあるものや縞紋様のあるものなど様々です。 和菓子の原料として利用が特に多かった京都の周辺地域では、各地から優れた品質を持つ小豆が集まると同時に、 地元の在来を含めて選りすぐれた性質を持つ小豆の選別が繰り返されました。 代表的なものに大粒で、煮ると香りが良く、しかも煮崩れしない(腹切れない)大納言小豆と呼ばれるものがつくられてき ました。他の主な種類に、円葉、金時などがある。 小豆餅は、天平九年(737)の正倉院古文書にも現れるほど古い食べ方ですが、ほかに小豆粥、小豆飯、それに牡丹 餅(ぼたもち)や饅頭などがあり、古来からいろいろな宗教的風習とともに発展し、今も廃れていない。 小豆を粉にして利用する和菓子は今日少ない。
《あずき粉を使った和菓子》 秋田諸越 等。
蕨粉(わらびこ) 蕨は地下に直径1p位の太く長い根茎を有し、横に伸びて繁茂している。 春になるとこの根茎から新芽がでる。 新芽は夏にかけて順次出てどんどん成長し、1m前後にもなる。 この成長を通じてでんぷんが合成され、根茎に蓄えられる。 秋になると地上の葉部は成長が止まり次第に茶色に色づき枯れる。 枯れた葉部は焼き払い根茎の掘り起こしにかかり、九月下旬から翌年四月にかけて行う。 根茎は30p前後に切り、臼(木製もたは石製)の中でよく粉砕する。 これに水を加えてでんぷんを洗い出し、何回も水洗いと沈殿を繰り返して精製し、製品にする。 歩留まりは12から15%である。 蕨でん粉の特産地は、岐阜高山、奈良、福岡、長野などであるが、その生産量は最近極めて少なくなっている。 それは、原料の根茎がなく、でんぷんの製造者がなくなったことによる。 現在は蕨でんぷんに代わり、タピオカでんぷんや甘藷でんぷんなどが代用されている。
《使用上の注意》 かなり長期間の保存もでき、かえって品質がよくなる。 よくなるというのは、保存中よく乾燥し、でんぷんの粘着性が増して、水を加えて加熱溶解する際、水がたくさん入り、取水分(総量)が多くなることである。 また作業中できるだけ完全に火を入れる方がよい。 石や砂が入っている場合があるので溶かした後、必ず裏ごししてから使用する。 《保存の方法》 ふつうの環境条件かでも長い間保存できるが、やはり高温多湿をさけた貯蔵庫の方が安全である。
《蕨粉を使った和菓子》 わらびもち、蕨羹 等。 和菓子のいのち刊行会発行 和菓子のいのちより |